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LCM メンタルケア学術学会総会における発表論文  抜粋
   NO.1  

(心理士・心理カウンセラー・北河原学習塾 塾長 )

    【中学生のストレスによる不登校】
 24年間中学生と向き合ってきた体験をもとに現代の中学生の不登校の一因であるストレスを考える。
文部科学省の学校基本調査が平成18年8月10日に発表された。それによると、
全国の公立・私立の中学校の不登校生徒総数は、99,546人にも及ぶ。少子化が反映して人数は4年
連続減少しているが、割合は4年ぶりに前年度比0.02ポイント増の2.75%(36人に1人)となった。
しかしこの数は、年間30日以上欠席した子供の数であり、保健室など教室以外に登校している子供の
数は含まれていない。おもてに表われていない不登校生徒という定義に当てはまらない休みがちな
子供の数を含めるとその数は、想像を絶するものがある。その上、他の子供も“いつそうなってもおかし
くない”多くの問題を抱えている。
 一般に心理学上では、母親などの保護者への強い依存心に根ざす依存性人格障害による不登校、
自尊心が傷つくのをあらかじめ避ける回避性人格障害による不登校、
優等生の息切れや甘やかされなどの神経症的不登校等が原因とされている。
実際に不登校になっている子供の声を聞くと、「いじめ」と「学校への不満」「家庭の不満」が
大きな起因となっている。
文部科学省もこの問題を重視し「不登校にならないための魅力ある学校づくり」・「不登校児童生徒に
対する柔軟な対応」をスローガンに色々な対策を講じている。
スクールカウンセラーや心の教室相談員の配置や家庭・地域との連携のための教育支援
センターの整備等を行っているが、形だけのものでほとんど機能していないことが不登校生徒数
にほとんど変化がない事を見ても分かる。
不登校に至る子供の本当の気持を理解していない対策だからである。
このような子供は、他人に対して不信感を抱き、自分に対しても罪悪感を持っている。
そのような子供が自ら学校の相談室や公的機関に出向いて相談する事などありえないし、親も
大きな問題になるのを心配して、公的機関に相談する事を躊躇している。
現在採られている対策は、子供から言わせると大人の勝手な自己満足的対策ばかりである。
また今の中学校は、管理主義的な体制が主流であり、校則により子供の生活の隅々まで管理して
いる。しかも多くの先生がその校則を守らせることが生活指導だと思い、生徒たちに細かく強制して
いる。その反面、「自主・責任」などの正反対の目標をあげている多くの学校がある。
子供が嫌う、大人の「本音」と「建て前」を象徴している典型的な例と言える。
この矛盾した現状を、第二反抗期の時期にいる中学生が素直に受け入れるわけがない。
子供の頃の精神形成、特に道徳観や価値観などは親やまわりにいる大人を通して形成される。
その大切な時期に、子供にとって一番影響を与える学校で、理由の説明もないまま、校則・内申書等
で強制的に子供を管理指導していく事が、子供のための本当の教育と言えるはずがない。
これは、子供のことを第一に考えたのではなく、学校という組織や教師たち大人のための学校運営で
ある。学校とは子供のためにあることを初心に戻って私たち大人が考慮し直す必要がある。
このような状況を考えても多くの子供がストレスを抱えながら学校生活を送っているのも当然といえる。
子供にとって一番の安らぎの場であるべき家庭も、少子化や核家族の増加により、自分専用の
部屋があり、ほとんどの時間を自分の部屋で過ごす子供が増えている。親も「子供とどのように接して
いいか分からない」・「子供が何を考えているか分からない」という親が多くなっているため、家族間の
交流は表面だけのものになり、心の交流はほとんどなくなってきている。
以上のような理由から、不登校等に至る大きな要因は、大人の子供に対する接し方、
つまり大人の身勝手に対するストレスであるという視点からこの問題を考えていく。
子供から見る大人の身勝手とはどんなことだろう。それは、中学生たちの意見を要約すると次のようになる。
家庭の場合 @塾などの習い事を休もうとすると怒るのに親の都合が悪い時は休ませる。
        A気に入って通っていた塾を成績が悪いという理由で強引に変えられる。
        B約束した事を親の都合で勝手に変更・中止する。
        C兄弟姉妹、友人等と何かにつけ比較する。
        Dテストの成績等、頑張ったことより結果だけを見てよく怒る。
        E両親の夫婦間の問題や仕事の都合で、勝手に引越しをし、転校させる。
        F付き合う友達のことまで口出しをしてくる。
        Gイライラしている時、子供にあたリ散らす。
        H行きたくもない旅行や買い物に人の都合も聞かず、連れ出す。
        I子供の考えや意見より世間体ばかり気にしている。
        J両親や祖父母の言う事が違い、どちらに従っていいか分からない。
        K興味があることをやりたくても、子供扱いしてまだ早いとやらせてくれない。
学校の場合 @部活の顧問の先生が、学校が休みの土・日に勝手に練習や練習試合等を組む。
        A部活の顧問の先生が、部活を休みがちな生徒は試合に出さないとプレッシャーをかける。
        B@、Aから自分の時間があまり持てず、好きな事ができない。
        C部活の先輩に部活への参加状況に対して文句を言われる。
        D内申書の問題からまじめな良い子でいなくてはいけないプレッシャーが常にある。         
        E内申点の問題から9科目通して良い結果を出さなくてはいけないプレッシャーが常にある。     
        F授業以外の学校行事が多いせいで授業がよく中止されるので、そのぶん授業の進み
         具合が早くなり理解できない事が多い。
        G季節の服装が限定されていて、暑くても寒くてもその服装をしなくてはいけない。
        H「人の個性を認めよう」と教わっても、校則でしばられていて自分の個性を出せない。
        I暴力(体罰?)を振るう先生や、その日の気分で態度が変わる先生がいる。
        J教職員室などにはエアコンがあるのに教室にはない。
        Kピアス・化粧など学校で禁止となっていることを先生がやっている。
以上が今の中学生の生の声である。家庭、学校とも大人の一方的な意見や考え方の押し付けに対       
する不満が多い。もちろん現状の社会や学校のシステムにも問題があることは前記の通りである。
しかし、その今のシステムを作ったのも子供に押し付けているのも大人である。
このような大人の子供への圧力が引き金になり同級生・下級生をいじめることで自分のストレスを発散
させるようになり、いじめられた子供がだれにも相談できないまま不登校になることが多くある。
不登校になった中学生A君とB君の例を挙げてみる。A君は、部活の顧問の先生の「部活動を頑張って
やりなさい。」という指導と、「勉強をしっかりやりなさい。」という指導のダブル・バインドによって中学
2・3年生の2年間ほとんど通学できず、時々保健室登校をした。
体の弱いA君にとって部活動を頑張ってやった日は、帰宅後疲れて勉強ができない。勉強しようと
部活動を休むと次の日に「気合が入ってないからだ。みんな両方頑張っているぞ。」と叱られる。
このようなことを繰り返しているうちにしばしば学校を休むようになった。休むと勉強もついていけず、
部活動にも行き辛くなってしまった。親に相談したが
内申書に響くことを恐れた親は学校に相談にも行けず、対策を講じないままA君は不登校になってしまった。
しかしA君は、高校に進学したいという希望があったため個人塾へ通い、その塾の教師に励まされながら、
2年間家庭での学習をしっかりと行い、希望高校に一般受験で合格した。
A君の場合は、塾の教師と言う信頼関係がある大人が周りにいた良い例である。
一方、いじめが原因で不登校になったB君は、親にも先生にも相談できないまま、自分の身を守るため
中学3年生の1年間、通学することをやめた。通っていた塾も、同級生が通っているという理由で辞め
ざるを得なかった。卒業後、夜間高校に進学したものの環境についていけず、数ヶ月で退学してしまった。
今は将来の夢もなく、人間不信から「ひきこもり」となり、回避性人格障害の症状も現れるようになり
入退院を繰り返している。B君の場合は、信頼関係がある大人が
周りにだれもいなかった悪い例である。A君の例はまれであり、圧倒的にB君の例の子供が多い。
こういう子供を一人でも減らす対策として中学校関係者に次のことを提案する。
@ 学校の規則、行事等を大人が一方的に決めないで生徒の意見をよく聞いてから決める。
A 何事も自主性を重んじ強制をしない。強制する事がある場合、なぜそうするかをよく説明する。
B 現在の教師の主観が入っている内申点の評価を100%絶対評価にし、日頃の行動まで内申点に影響
  するような学習指導は絶対にしない。
C 部活動の顧問をやる教師は、生徒の体力、体調、運動への向き不向き等を十分理解した上で指導し、
  部活動中十分な水分を摂らせるなどの健康管理にも注意する。 
D 教師の言葉にはピグマリオン効果(教師の期待効果)があり、生徒に多大な影響を与えることを自覚する。
E 学校は子供たちのためにあるという基本を再確認する。
  また保護者の方に次のことを提案する。
@ 家庭内のことを決める時に子供の意見も聞き、何事も話し合って決め、
   日頃からどんな事でも家族で話し合える環境をつくる。
A 子供の自主性を大切に育てる事と放任主義は違うことを心得、
   子供に最低限度の躾をきちんとする事は、親の責任だと自覚する。
B 子供にも自分と違う人格があることを認め、自分の考えを押し付けない。
C 日頃から家族それぞれの1日の出来事を、夕食時等に報告し合うなどの時間を設け、
   常にお互いの心の交流をはかる。
D 「子供を人質にされているから学校や先生に色々な意見を言えない。」という発想ををやめ、
   学校と家庭で連携をとりながら、一緒に子供を育てると言う考えをしっかり持つ。
E 学校に通わせるのは、親の普通教育を受けさせる義務の一つの手段であり、
   子供に学校に通わなくてはいけない義務はない事を認識する。
以上のようなことを大人たちが日々努力していけば、不登校になる子供の数はかなりの割合で
減らす事ができる。子供と信頼関係を築いている大人が不登校等に陥る子供の周り
にいないことが、この問題を深刻化していることを認識し、絶えず子供に目を向けていくべきである。
登下校中に子供が殺害される事件が連続し、学校関係者等が躍起となって対策を練っている事が毎日の
ように報道されている。だが不登校になっている子供で、毎日死にたいと思うほど悩んでいる子供の数
の方がはるかに多いことを考えると、この問題も登下校連続殺人と同様一刻も早く的確な対策を取る
必要がある。子供たちのストレスを解消する方法は、今思っている不満などを正直に言える環境を整え、
その一つ一つに耳を傾け、議論を交わすことである。
現在各地域に配置されている民生委員が児童委員を兼ねながら家庭の問題にも対処しているが、
この問題に関しては、まったく機能していないのが現状である。また悩みを抱えた親から
「最初に何処に相談に行けばいいか分からない」、「学校に相談したが適切なアドバイスをもらえなかった」
という声も多く聞かれる。そこで、前記の公的施設や学校内の相談室の他に、
各地域ごとに子供や親が気軽に色んな問題を相談できる「教育問題専門の民生委員」(仮称)を配置
し、相談者の家に出向いたり、相談員の家で抱えている問題について議論するシステムを提案する。
その議論の中で、必要とされる諸団体と連携をとりながら相談者の納得のいく解決方法を見いだしていく。
この方法なら親も子供も気兼ねなく、気楽に相談できるし、時間をかけて十分に議論できる。
こうした地域に根ざした教育問題専門のサポートシステムの整備を各関係機関に切にお願いする。
しかし、こういう他力本願のサポートシステムの整備を待つのではなく、今の状況の中で親や教師など
が子供と真剣に向かい合って少しでも議論していき、できる事は何でもやるという自覚が必要である。
今現在悩んでいる子供たちの苦しみを考えると、システムが整備されるのを待っている時間の余裕はない。
もちろん子供の意見を聞くことは、子供の一方的なわがままを認める事ではない。その子供の不満、質問を
真摯に受け止め、上から押し付けるのではなく対等な立場で十分に納得のいくように時間をかけて説明する
のである。この一見簡単な事に思える議論が十分にできていないことが、ストレスが蓄積していく重大な
原因になっている。
まだ子供だから理解できないという発想は好ましくない。中学生は大人が考えている以上に十分に
議論できるし、それを望んでいる。
そして、その議論の中で子供にとって一番身近な存在である教師や親、又はカウンセラー等の専門家が
子供が出している「助けて」というサインを見逃さずに、その子供の
社会・学校・大人に対する誤った認知を時間をかけて修正していき、ストレスに至っている刺激を
悲観的に捉えないように諭していくことである。
この納得いくまで議論する事が、現在希薄になっている心の交流に繋がるのである。
しかし親も仕事などで忙しく自分の子供とまっすぐに向き合っている暇がないと「言い訳」する。
子供を持った親の責任として、自分の子供は自分で守り育てるという自覚に欠けている親が今は多く
なっている。忙しいという口実でこの問題から逃げず、しっかり子育てをすべきである。。
教師も多忙で一人ひとりの生徒と向き合っている時間がないと「言い訳」する。
だがその言い訳には矛盾がある。自分の生徒一人ひとりと真剣に向き合ってこそ、その生徒に合った
指導ができ、ひいてはクラス全体・学校全体の健全な運営ができるからである。子供一人ひとりに目を向け
その子供の健全な成長を手助けすることが、教師の第一の仕事である。
今日、何かにつけ言い訳をし自分の責任や義務から逃げている大人が多くなってきている。
学校が悪い、家庭の躾が悪いと責任の押し付け合いをせず、お互いに協力して対処しなくてはならない。
近年、LD(学習障害)・ADHD(注意欠陥多動性障害)からの事例や保護者による子供の虐待等、登校を
困難にするような事例も新たな不登校問題として指摘されてきている。
もちろん、不登校になる背景は、個々の事情により特定できないことも多いという点にも十分留意しなければ
ならないが、不登校に至る大きな要因は、ストレスにあることを認識し、一刻も早く対処していく事が必要である。
自分の子供であり、将来日本を背負っていく大切な宝である子供たちのため、親・教師・子供の周りにいる
大人が連携して真剣に対処していけば、このような問題は将来激減すると確信する。
子供たちが何でも話せる家庭、目を輝かせながら毎日楽しく通学できる学校、将来の夢が持てる社会に
することが急務である。                              
 
御礼)
今回の論文を書くきっかけを与えてくださったメンタルケア学術学会の理事長先生をはじめ
関係諸団体皆様に感謝を申し上げ、この論文がカウンセラーの方々および関係諸団体の方々に
少しでも参考になれば幸いでございます。ありがとうございました。    以上。
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